治山です。
すこぶる面白い本を読みました。
「パレスチナ」 船津 靖 著 (中公新書) です。
以前から、パレスチナ問題について関心を持っていました。
きっかけは、落合信彦。もう20年も前の事、落合信彦のノンフィクション系の中東本を読み
漁りました。その中の一つの主役は、「モサド」。007や、ミッションインポッシブルのトム・クルーズ
のような、架空のスパイものではなく、正真正銘リアルのスパイ。
彼らの情報は、戦争の勝敗まで左右する。もっと言うとイスラエルという国の存亡までかかわって
くる。しかし、一つ間違うとスパイとして捕らえられ、大変なことになる。
どうしても映画の世界としか思えない物語に時間を忘れて読みふけったのを覚えています。
それから、社会人になりニューヨークで勤務していた時代。
イスラエルよりユダヤ人の人口が多いとされるニューヨークにいた時に、ニューヨークタイムスを
はじめ、多くのメディアで取り上げられたパレスチナ問題の一進一退に、注目していました。
ちょうどその時クリントンの仲介でラビンとアラファトが歴史的な合意をして、ノーベル平和賞を受賞
しました。
そういった、断片的な知識パーツを、一本の線でつなげるどころか、見事な完成図で
まとめているのがこの「パレスチナ」です。
一つ一つのパーツが、ああこう繋がっていたのか、こういう背景があったのかと、20年以上
未完だったジグソーパズルが完成したような気がしました。
著者は、例のオスロ合意から始まる和平、そしてその崩壊の現場を、現地イスラエルのど真ん中
に共同通信社の記者として、それだけではなくまさに歴史の証人として見て、聞いて、そして伝え
てくれています。戦車とすれ違い、兵士に脅され、命の保証がない封鎖中のエリアにさえ
出かけて行き、瓦礫の中で取材を続けていました。
日本から、遠く離れた国、いまだにテロや戦争と直面している地域。地球では、まだまだ
こういった地域があります。我々日本人の生きている狭い範囲の価値観だけでは、想像も
つかない地域、そしてそこに生きている人がいるということを再認識させてくれます。
言い古されていますが、「生きる」ということ、「平和」ということ、「安全」ということ、そして
「明日」がくるということ。これら我々が当たり前と思っていることの大切さを再認識させてくれます。
いま日本は、暑い日が続き、オフィスも電車も大変です。
ただ、日本という国に生まれて、暮らせている幸せは、その大変さの何倍もの幸せがあると
感じます。今日に感謝して生きることが、大切なんだとしみじみ思いました。
この夏の一冊、お勧めです。
/治山