諸説あるが、一説によるとスーツが誕生して今年で350年+2年となるそうだ。
「イギリス国王 チャールズ2世による衣服改造宣言 1666年」を起源。
これほど、長く、広く、世界中で人々に愛されてきたウェアは数少ない。
この魔力に取りつかれたのは、世界の元首はじめ、セレブ、果てはジェームス・ボンドやキングズマンまで数知れない。
さらには、そのスーツ道を見極めようと、世界中の職人たちが今も腕を競っている。
より美しく、より着やすく!を求めて。
僕自身も、この業界に身を置いて20年を超えた。
先日、改めて「スーツの魔力」に触れた気がした。
まず頭に入れていただきたいのは、スーツは、立体服だということ。(スーツ以外の大抵の服は、それ自体は平面であり、着用して初めて立体となる。しかしスーツは、着る前から立体である。)普通にハンガーにかけても腕や胸の部分に膨らみがある。
しかし考えてみると、布は平面、たよりないほどヒラヒラしている。
その布から立体の服を作る。これは思うより難しい。
単純に平面のものを、立体にしようとする時、素材自体にハリコシがあり固くすれば問題は解決する。しかしそれでは、着心地が悪い。中世の鎧や宇宙服などは着心地が最悪だろう。
「ヒラヒラした布を美しい立体にせよ!」このミッションに対し歴代のスーツ職人は、考え、苦労し、試行錯誤しながら独自の方法で実現してきた。それはまるで平面の絵をいかにも立体であるように見せる、といったダビンチやピカソのような画家の作業に似ている。
さらにスーツ職人は、画家にはない難題を突き付けられる。
「着にくい物は、スーツではない!」
ただ単に立体では失格。着やすくして初めて合格となる。
スーツは芸術品であり実用品。見て美しく、着て美しく、そして快適でないといけない。
さあ、それから職人は悩んだ。どうすればいい?
つづく。
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