「さらに再びの給水タイム!」
⑨ 「これがフル?との闘い」 初めての43キロ
一度、43キロ(42.195キロ以上)は、走っておかないといけないなと思って(この時期に及んでも、完走できる自信はない)レースの約一か月前に、チャレンジした。丁度東京出張があり、東京の道を走った。東京工業大学あたりからスタートして、実は適当に走った。要は43キロ走ればいい。エプソンの腕時計はGPS機能が付いていて、適当に走っても何キロ走ったかどうか教えてくれる。
この日は朝早く起きて、ペットボトルの水を一本持って、スタートした。例の省エネ走行のお蔭と格さん(アイポッド)を聴きながら、快適に走った。適当に走って行くと、日本体育大学が見えてきた「こんな所のあるんだ」と思いつつ、さらに奥に行ってみると『駒沢公園』の看板。あの有名な駒沢公園ってこんな所なんだ、と思いながらそちらに入っていくと、大きなコースがあった。一周3~4キロと書いてある。良いじゃん!ここを残り分何週も走ろうと、それからはぐるぐるそのコースを走った。まだ、43キロまで20キロ近く残っていたと思う。
出発してから、そこに着くまで、さまざまな物を聴いていた。
落語2本。星新一講演、井上ひさし講演。白洲正子講演(いずれも近くの図書館で面白そうなものを録音(たいして種類はなかった)(涙)そして、その公園に入ってからは、井上ひさしの「父と暮らせば」の朗読劇を聴いた。これについては、また後で書きます。
それを聞きながら走っていった。このコースは、多くの大学陸上部の練習場らしく、非常に多くの大学生や一般人が走っていた。特に印象深かったのが、アフリカ系の女子大学生(多分)よくテレビで見るアフリカ系の光沢のある肌の色で、身長は僕とたいして変わらないのだけれど、脚の長さが僕の胸くらいあるのではないかと思える位。まさに脚長!その彼女が他の日本人選手と共に、颯爽と走っている。まさに颯爽と言う表現がぴったりで、長い脚を思い切り利用した長いストライプでジャンプするように走る。
駒沢公園が、アフリカの草原に見え、彼女がカモシカのように見えた。その彼女が週遅れの僕を何度も抜き去っていく。日本人の選手は、こんな人たちと戦うなんてと実際のランナーを見て驚愕した。改めて「高橋尚子」「野口みずき」「有森裕子」選手たちの偉大さが分かった。
話を元に戻そう。
そうやってへとへとになりながら走るつづけた。極力距離は見ないようにした。見るのは脈拍数のみ。150以上にならないように走り続けた。最後の方は、もう限界もう限界と心で叫びながら走った。時計を見た時まだ多く距離が残っていたらショックなので、あと一周位で見るようにした。もう一周が限界。そろそろあと一周だろうと、満を侍して見た時の距離は、残り2周以上ある!マジで!!ショック。
それから気持ちを入れ替えて、枝雀を聴く。彼の軽快なしゃべりは、軽快すぎて頭を使わないと言葉入ってこない。普段は爆笑だが、この頭も身体もボロボロの今は考える余裕がない。三枝に変える。少しゆるくなったが、やはりこれも頭を使わないと入ってこない。ここで水を飲む。考えて見ると。ここまでほぼ5時間、何も口にしていない。
水を飲むと少し元気になるが、まだ1週以上残っている。うわあ、止めたい!倒れる寸前。その気持ちを必死て押さえつつ。公園内の自動販売機でスポーツドリンクを飲む。のこり、3キロ強。ここで止めたい!「今5時間弱、ここまで走ってきて立派立派。脚きりは6時間。本番だと歩いてもゴールできる。身体を壊す前に、ここで止めよう!」と悪魔のささやき。自分内抗争。しかし、少しだけ、ほんの少しだけ意地の方が勝った。多分52対48位。そして再び走り出した。ゆっくりゆっくり、歩くような速度だったかもしれない。さっきまで一歩も足が出ないと思っていたが、走り出すとなんとか足が前に出てくれる。何週もまわっているのでコースを覚えている。このカーブを超えると坂があって、オリンピック公園を左に見て、それを超えると・・。そんな、あと一歩あと一歩を繰り返しながら、進んでいく。ようやく見えてきた。ゴールの自動販売機。あと少しあと少しを繰り返して、ゴールにたどり着いた。そのまま横の芝生と言いたいところだが、芝生がない。しょうがないので鉄の柵に座った。
時計を見ると、42・・・キロ以上。5時間11分。OK!OK! 足きり内。「I GOT
IT!アイガッデッド!」
それから20分くらい休んで、帰ろうとするが、個々からどうやって帰っていいか分からない。まさか歩いては帰れない。地図を見て。近くに電車はない(涙)バスを待って帰る事にした。そのバスが又来ずに、着替えもなく。身体は心底疲れた。今回全ての工程(本番も含めて)一番疲れた日だった!
東京でも、いろんなところを走った。一つ長いコースを見つけて蒲田まで走った
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「もう一回取ろう!給水並びにトイレタイム」
⑩ 「時間との闘い」
話は前後するが、30キロ、40キロという距離の壁のもう一つ違う壁に、時間の壁があった。
6時間という足きりタイムがある以上、それ以内で走らなければならない。(正直エントリーするまで足きりタイムがある事さえ知らなかった(汗))
それが8分の壁である。
一キロ8分以内が必要。一キロ8分のペースだと、42キロで336分。5時間36分。本番で給水やトイレ、またスタート時でもたもたすると、間に合わない可能性大。どうしても7分台で走らなければならない。
例の心拍数140以下のもたもた走行だと、20キロもなんとか走れるようになった。
しかし、このペースだとタイムオーバー。やばい!と気づいたのが、2か月前。そこから、タイムも少しずつ意識をするようになった。早く走ろうとすると、後半ばてる。ばてないようにゆっくり走ると、タイムアウト。そのジレンマの中で、脚のピッチを速めたり、短い距離(10キロ、すでに10キロは短い距離扱いになっていた!えらい!)だと思いきってスピードを増したりした。
それを繰り返すこと1か月、ようやく心拍数が上がらずに8分を切るタイムで走れるようになった。実際 例の練習でのフルでは・・となった。(涙、涙)
番外:
1.こうやって、一応42.195キロ以上も経験した。
その後の一か月は、10キロ、もしくは20キロを週に一度走ったり、朝起きて5キロ強を走ったりと、キープに努めた。
朝、楽園の周りを走っていると、(ラジオ)体操中のシニア集団に会ったり、早く出勤している社員に会ったりして、アメリカにいた時にもやっていないアメリカのエリートビジネスマンのような生活をしていた。(笑)
2.応援に行きます!という社員の嬉しい声を多く聞いたので、本社に一枚の張り紙を出した。
―お知らせー
普段 目に出来ない
ヘロヘロの社長を見に(笑いに?)行こう!!
第一回 岡山マラソンに
アイスーツを着て 出場します!!
「アイスーツのストレッチ力」と「家内安全」
「商売繁盛」「みんなの幸せ」を祈念して、
走ります!! 完走できるかどうか?
11/8(日) 時間がある人は応援よろしく!!
(ただし、日曜日なので、営業を最優先にしてください(笑) 治山
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「残り3日になった!」
さあここからラストスパート 大会までの前々日と前日、そして当日の3日間にスポットを当てて話を進める。
「前々日」
その前まで出張で、前々日の朝、岡山に帰ってきてふと気づく。
今更だが、全コースを下見していない。遅い!(苦笑)ぜひ見ておかなければマズイ。どんなアップダウンかとか、当日どう曲がるなど、知らないとえらいことだ。
もちろん、明日(前日)の土曜日に走ったり、自転車で回ると疲れが残る。車で見よう。仕事を早めに片付けて、社員にお願いして、自分は助手席でコースの確認をすることにした。改めて42キロの長さに驚く。車で行ってもいやというくらい長い。そして思った以上にアップダウンがある。特に後半、もっとフラットと思っていたが、結構上りもある。
退屈な田舎道を延々と走るルートもある。
本当にこれを走るの?スーツで?「結構ありますね。」社員も苦笑いである。その横の僕は、それ以上の凍りついた笑いである。
車でも1時間以上かかり、あたりは夕方で暗くなってきた、と同時に心も暗くなってくる。帰って寝よ(笑)
それにしても、こんな気持ちは久しぶりだ。株主総会でも、記者会見、テレビ出演、いろんな講演でも、あるいは、冠婚葬祭や、いろんな会の総会等、さまざまな経験をしてきたが、こんなに妙なプレッシャーはない。いつもは何とかなる、なんとかする!と思ってやってがきたが、今回はやる気はあっても、身体がちゃんと最後までもってくれないと失敗する。今まで多くの人が協力したくれた事が僕一人のせいで失敗する。(すでに僕だけのプロジェクトではなくなってきていた)
変な気持になりながら寝る。しかし性格なのか。のび太のようにベッドに入るとあっという間に寝てしまった(笑)
(つづく)
コメントする